相模の赤いヤマメ

2018年9月18日東丹沢, 生物

ここ数年、当ブログがテーマの一つに登場してきた「相模の赤いヤマメ」について。今回は、しがないアングラーなりの結果報告となる。

相模の赤いヤマメは何者か?

ヤマメだが赤みが強くアマゴのような赤色斑点が見られる
このテーマについて、こだわるアングラー(釣り師)も少ないとは確かに思う。

だが、昨今感じたことを丹沢界隈をホームとする首都圏や特に神奈川の渓流釣りを愛するアングラーにはぜひお伝えしたいと筆を取っている次第である。

さて、昭和期における相模川流域の古老が口々に「赤いヤマメ」と話したと記録されているそのヤマメはいかなるヤマメなのか?

若輩であるボクはアマゴとの混同ではないかと初期には考えていたが、 丹沢で知っておくべきアマゴ分布の謎のこと赤いヤマメと相模のアマゴ、と投稿を重ねるうちにもそういった個体ではないかと思しきものと何回も手にし、ぼんやりとではあるのだが、ある核心に近づきつつある気がしている。

繰り返しになるが、この核心とは赤いヤマメが丹沢在来のヤマメなのか(あるいは近い個体)というところにあって、箱根や西丹沢は酒匂川水系のアマゴ、及びアマゴとヤマメのハイブリッドの例とは切り離して東丹沢、北丹沢(裏丹沢)に限って話を進めたい。

一般的な個体
もちろん、学者でもないボクが全国的に調査などをしているわけでもないが、双方を知るものとして多くはアマゴのほうがヤマメに比べて体側の赤みが強く、さらに赤色斑点があるものと承知しているはずだ。

魚類学等から見ると両者は亜種以上に近いものであるそうで、これを考えると”赤くない”アマゴも存在しそうに思えるのだが、ネット検索の画像や資料の画像を見る限りでは、やはりアマゴはアマゴらしく、ヤマメはヤマメらしい。

もちろん、種の多様性として一部において、赤色斑点のないなどというアマゴも存在していてもおかしくはない。

じじつ、大分県大野川水系や三重県の員弁川水系にはイワメ(無斑型アマゴ)と呼ばれるパーマークすらないものも確かに存在している。

これらは、突発的な劣性遺伝の定着ではないかと考えられているらしいのですが、東丹沢及び北丹沢を流れる相模川水系上流部の広域にわたって語られていた赤いヤマメとは?

赤いヤマメはアマゴにあらず

イワナとヤマメのハイブリッド(F1)
当残ながら、何年か渓流釣りをしていると変わった個体(マス類)に出会うことも少なくはなく、仲間内では”サバ”などと呼んでいるヤマメとイワナのF1(交雑種)などと出くわし驚くこともある。

しかしながら、東丹沢や北丹沢(裏丹沢)を流れる相模川水系の上流部で釣れてくるヤマメについても少しばかり違和感を覚えているところなのである。

その”違和感”とは、点在する最上流部においてのヤマメの特徴について、アマゴに近い体色を持つものが生息しているという点である。

当ブログの投稿においても再三にわたり、「大正時代の関東大震災で丹沢の多くの河川では渓魚が死滅した」。

と、紹介して被害の少なかった河川より移入されて復活している経緯もあるとご紹介してきているわけだが、これらの”被害が少なかった河川”に竿を出すたびに感じることが一点だけある。

これが体色の赤味が強く、ともすれば赤色斑点をわずかながら持つものが多いと言うことなのである。

すなわちは、アマゴに近い形態を持つ個体が相模川水系最上流部のさらに関東大震災で被害が少なかったとされる河川で多いのかといった点だ。

無論、平成初期までの釣りブームで無秩序な放流がおこなわれてきておりアマゴとのハイブリッドが定着してしまった可能性は否定できない。

そのいずれにおいても少なからず、人為的な放流という手が入っている点は否定できないわけだ。

わずかに赤色斑点を持つ水沢川のヤマメ
けして悪意のおける行為ではないにしろ、アユの放流に交じりアマゴが放流されてきた事実あり。

なんと、驚くことに明治時代から相模川水系や多摩川水系で行われてきた点も以前の投稿で説明してきた。

この放流される琵琶湖産の中に一定のアマゴ稚魚が混入していたそうだ。

むろん、今ほどダムや堰堤の少なかった時代にこの行為が数年にわたっても繰り返されているのなら、当然最上流部にまでアマゴは達していたと容易に考えられるところなのだ。

それを踏まえた上でもこのアマゴに近い形態を持つヤマメが、”疑わしく多い”と最近は感じている次第なのである。

このような話をすると、盗掘なども懸念同様に声は大きくできない訳だが、相模川水系中津川支流の早戸川は流入河川、水沢川などは知る人ぞ知るところであり、ヤマメでありながら体側に赤色斑点を持つものが生息しているなどの話も少なくはない。

県ではこういった河川での丹沢におけるヤマメ在来種を採取して人工ふ化放流するというプロジェクトが進行しつつあるそうだが、学術的に確信のあるものであるなら喜ばしいかぎりである。

ただし、草の根的なボクの実感としては、それ以外の小渓でも未だに側線上にのみ赤色斑点を持つものや無班でありながら赤色の濃いものなど、これが”相模の赤いヤマメ”と思しき個体を数河川で確認している。

相模川水系某小河川に多いヤマメ
婚姻色では?と疑念を持つ方もおられるかと思うが、体調が15㎝未満のものや5月には確認できるのでこれには当たらないのではないかと思う。

ほんの一部だが、このような形骸的特徴を持つヤマメが50%近い割合で生息する河川が数か所あるのは確かなのだ。

とは言っても、先ほどの広域ととらえると10%程度の存在であって、判断には悩ましいところが強いのも事実。

ただ今のところ、結論としてはヤマメ・アマゴの境界線とされる相模川水系においては、太古よりハイブリッド(混血)という形で両者がせめぎあい容姿に混沌とした形態が残った姿が”赤いヤマメ”であり、丹沢の在来種ヤマメではないかと感じてはいるのだが、これいかにといったところである。

少なくとも、赤色斑点を持たないにしても体側に強い赤味を帯びているヤマメこそが丹沢の在来種ではないかと確信を強めている昨今でなのである。

しばしば、魚類に詳しくはない者を含めて「天然のヤマメ」などと軽言してしまうことも多いが、丹沢ヤマメのそれに答えを出すのはいずれにしても無理が多すぎる。

無駄とわかりながら、こういったところにロマンを馳せて竿を出して見るのも一興としている…Orz

赤いヤマメと相模のアマゴ 参考リンク

以下は、県による学術的な調査報告などと、大島博士による興味深い資料となります。

» 丹沢の渓流魚の危機 – 神奈川県農林水産情報センター

» [PDF] 丹沢山塊における渓流魚の分布について – 神奈川県農林水産情報 …

» アマゴ – 神奈川県レッドデータブック

» 大島 正滿:ヤマメ及びアマゴの分布境界線に就いて 地理学評論 Vol.6 (1930) No.7 P1186-1208_2

» 神奈川県水産技術センター内水面試験場ホームページ > ヤマメ