相模のアマゴ?

2018年9月18日Fishing, 生物

在来種としてのアマゴは神奈川県内に存在するのか?

今回のこのテーマも以前に投稿した一連の「丹沢におけるヤマメ在来種」とリンクしたものになります。

神奈川県内の在来アマゴ

個人的なこのテーマの解釈として、丹沢といった一つのくくりでとらえれば、ヤマメとの交流が激しく放流魚を含めての混血(ハイブリッド)、あるいはヤマメとアマゴの混血種がそもそもの丹沢ヤマメ在来種ではないかという疑いがこれまでに出てきた。

それでは、残すところの静岡県は御殿場付近を水源とする酒匂川水系の鮎沢川以西の河川についてはどうなのかといったところに眼を向けていきたいと思います。

酒匂川以西がアマゴの分布域であるというのが定説になってはいますが、これは過去にもご紹介した昭和のサケ・マス属の権威、生物学者の大島政満博士による「大島線」に基づくものであることは、このあたりにご興味のある渓流ファンであればご存知の方も少なくはないものと思われます。

出典:大島 正滿 ヤマメ及びアマゴの分布境界線に就いて

じつは、このテーマについては20年ほど前に出版された 「瀬戸際の渓魚たち つり人社」 のなかで、日本のフライフィッシング界のレジェンド、佐藤成史氏が「種の境界と混沌」として記事にされています。
やや、焼き増しというか「二番煎じ」のようになってしまうのでは?とは感じてはいますが、食いついてみないことにはといったところでご容赦をw

鮎沢川のアマゴ

以前の投稿で、在来アマゴとしての姿を丹沢に追うことは西丹沢の酒匂川水系にすら今ではできず、と綴った覚えがある。

この丹沢山塊以外を流する支流鮎沢川水系については、丹沢で知っておくべきアマゴ分布の謎のこと で紹介しているので一読を。

この鮎沢川水系は、丹沢はもちろんのこと水源が静岡県側の御殿場市付近にあり、「相模のアマゴ」といったテーマから外れてしまうので今回は避けますが、補足として鮎沢川上流にみられるアマゴは在来種と思われるものであっても御殿場市の地理的な特殊性があるわけである。

鮎沢川は静岡県に入ると小山橋で左から大沢川(小山大沢川)が合流している。

駿河小山の市街に入ると護岸と小堰堤が続き、護岸なども多くなるが、放流は有るので釣場としての形は保たれており、市内で氏沢川、西沢川、須川川、野沢などが合流している。

しかし、平野に放射状に広がるこの上流域が問題で、これらが農業用の水路などで複雑につながっている、あるいはつながっていた疑いが強く、狩野川支流黄瀬川上流との交流すら疑いが強い。

野沢川はヤマメの生息だが、須川にはアマゴとヤマメが居たりと、このあたりがサケ・マス学の権威で知られる大島博士の言うところの大島線を感じさせる地域であることが実感できる。

平野に富士川水系と鮎沢川水系が水路などで複雑につながっている、あるいはつながっていた可能性が高いうえに水害などで分布が混沌としたことが過去に何度もあったのではないかと想像できます。

つまりは相模湾から遡上定着したものと考えるよりも、人為的な影響を受けた存在である可能性が高いというわけである。

丹沢に在来アマゴの姿を追うことはできず、県内に限定した場合には酒匂川以西には残すところ、箱根外輪山を水源とした河川がいくつか考えられるところです。

狩川と県西部の独立小河川にアマゴの存在は?

それでは、酒匂川水系でありながら箱根外輪山の金時山を水源とする酒匂川下流で合流する狩川はどうだろうか?

狩川

可能性は高いと考えたのだが、結果は支流の内川を含めてヤマメの川で地元の釣り人も断言する流れであった。

漁協のヤマメ放流も定期的に行われているわけだし、名の知れた渓であることからもまず間違いはないところである。

酒匂川のすぐ西に河口を持つ、小田原市の山王川(久野川)や早川水系、あるいは湯河原市の千歳川水系や新崎川はどうだろうか?

佐藤氏が調査されて以降、20年近く経過しているわけで、さらに状況は悪くなっている可能性が高い。

山王川(久野川)
しかしながら、幸か不幸か国内の経済状況が悪かったせいもあって、各河川を回ってみてもそれほど開発による河川の影響は変わらないようだった。

まず、久野川だがかなり上流部まで両岸が護岸整備された細流で、漁業権は設定されていない。

かつて地元有志によるヤマメの放流があったとされるが、現在は不明である。

最上流部にわずかな可能性がありそうだが、かなりの藪沢で流れのキャパシティーに見合った、せいぜい18㎝どまりで生体と思われる小さなヤマメが確認できる程度であった。

地元でも「少しはヤマメがいるよ…」といった感じで、すでにヤマメの川として認知定着してしまっているようである。

山王川上流
それほど興味のない場合、昔からヤマメもアマゴもひとくくりに「ヤマメ」としている可能性も強いわけだが、個人的にはアマゴが絶えてしまった後にヤマメを放流し、この細流に定着しているような印象を受ける。

つづいて一見すると最有望かと思われる早川について。

この河川の漁協も長年ヤマメを放流、最上流部はご存知の通り火山性の影響を受けやすく、太古からの種の保全といったところからは可能性は薄いと考えた。

それでは、湯河原の2川はどうか?

千歳川
新崎川については支流が少ないうえにヤマメ・マスを売りにする管理釣り場、最上流部もヤマメの川とされ、じっさいにヤマメが釣れ、現地でのアマゴの話は乏しい。

最後に千歳川だが、こちらも新崎川同様に公にはヤマメ・ニジマスの放流がなされ、現実的にはヤマメとアマゴ混生?の川となっているが、ポイントによってはアマゴの生息が多い。

しかも、上流部の枝沢などには確実なアマゴとまでは判断しがたいが、興味深く疑いが強い個体が存在していた。

これが、オレンジ色の着色斑点がわずかにあり、背中の黒点も乏しくパーマークもいびつでランダムといったアマゴともヤマメとも取れない以前から紹介してきた「丹沢在来種」に近いものだ。

丹沢の細流でしばしば見かける怪しいヤマメ
しかし、箱根を超えて西の駿河湾に流れ込む一連の狩野川や富士川水系のそれとは違って、確実にアマゴと言い切れる個体は確認できない。

だが、反面では神奈川の在来ヤマメとして考えると極めて怪しい個体も多いのも事実だと感じる。

千歳川に関しては、各枝沢に生息する個体がそれぞれに特徴を持ち、意外にもこれが本来の在来種の姿ではないか? と期待されるところでもあった。

ただし、これらもハイブリッドの可能性が高いわけで、これら混沌とした状況に関しては、これまでの無秩序な放流による弊害であるのは疑いはないようだ。

妙に黒色斑点が少ない個体
もちろん、年に数回の実釣で結論を出すのは早計であるのはわかっている。

承知の上で神奈川県内にアマゴが存在するとすれば、すべからく放流魚であって在来種の可能性はまずないと実感しているところであるが真実はどうなのか?

大島博士が「大島線」を引かれた昭和前期を知る由もないが、平成の世では箱根を西に超えた狩野川水系や富士川水系がアマゴ分布の北限としたいとボクはこのテーマの結論と感じている。

相模のアマゴ? 参考リンクと文献

以下は、県による学術的な調査報告などと、大島博士による興味深い資料となります。

» 丹沢の渓流魚の危機 – 神奈川県農林水産情報センター

» [PDF] 丹沢山塊における渓流魚の分布について – 神奈川県農林水産情報 …

» アマゴ – 神奈川県レッドデータブック

» 大島 正滿:ヤマメ及びアマゴの分布境界線に就いて 地理学評論 Vol.6 (1930) No.7 P1186-1208_2

» 佐藤成史著:瀬戸際の渓魚たち つり人社